ワイヤーボンダーのワイヤー軌跡追跡システム

半導体製造プロセスの1つにチップとリードをワイヤーボンダーで接続するプロセスがあります。ここではワイヤーボンダーにより接続されたワイヤーの3次元的ループ形状を測定するシステムについて記述します。ワイヤーの3次元的ループ形状を測定するためステレオ画像処理を行います。ワイヤーボンダーで接続されたワイヤーは3次元的な曲線となっています。ステレオ画像から3次元座標値を求める場合、左右画像データで同一点の対応をとらなければなりません。3次元的な曲線をステレオ撮像した場合、左右画像データでどのように対応をとるかが1つ問題になります。ここではワイヤーの太さは一定で、左右画像データ上では明るく見える部分の中央をワイヤーの中心線とすることで対応をとります。左右画像データ上でワイヤーの中心線を求め、次に画像データ上のエピポーラ線を応用してワイヤーの3次元的ループ形状を求めます(弊社特許を参照、図27)。

図27.ワイヤーの3次元的ループ形状を求めるアルゴリズム
図27.ワイヤーの3次元的ループ形状を求めるアルゴリズム

ステレオ光学系の交差角度を大きくすると測定精度高くすることが出来ますが、左右画像データでの差異が大きくなるためパターンマッチング等を用いた計測が難しくなります。テストに使用したステレオ光学系の交差角度を約30度です。

1)チップおよびリードフレームの位置決め
チップが測定テーブルの載せられ、測定視野位置にロードされた後、チップおよびリードフレームの位置決めを行います。チップおよびリードフレームの位置決めは、チップ上に左右2点、リードフレーム上に左右2点を画像データ上で特徴ある位置を選び、予めモデルとして登録しておきます。ロードされたチップは登録されているモデルを用いてサーチし、モデルと同一の位置を見いだし、検出された位置がずれている場合には、補正を行います。チップが傾いている場合にはテーブルの回転角度も補正を行います。チップおよびリードフレームの位置決めモデルを用いてサーチした結果を図28に示します。
図28.左右画像データ上でサーチされたチップエッジとリードフレームエッジ
図28.左右画像データ上でサーチされたチップエッジとリードフレームエッジ
(左:左画像、右:右画像、図中に白い+マークでサーチされた位置が示されます)

2)ワイヤーの始点および終点のサーチ
ワイヤーの始点および終点を画像処理から自動的に検出することは大変難しいため、画像データモデルを用いてサーチすることにより求めます。ワイヤーの始点は、チップ上のパッドであり、画像データとして特徴ある領域となっているので、対象となるパッドを含めた領域をモデルパターンとして登録します。ワイヤーの終点は、リードフレーム上にあり、これもリードフレームを含めた画像データをモデルパターンとして登録します。チップおよびリードフレームは1)で位置決めされているので、始点および終点のモデルパターンは類似パターンが存在しても問題とはなりません。予め登録された各ワイヤーの始点および終点モデルを用いてワイヤーの始点および終点をパターンマッチングにより求めます。ワイヤーの始点および終点位置のサーチ結果を図29に示します。始点および終点のサーチは図28と同一の画像データで行いますが、図29の画像はワイヤー撮像用照明で撮像した画像データ(正確には反転した画像データ)上に表示しています。
図29.左右画像データ上での各ワイヤーの始点と終点位置
図29.左右画像データ上での各ワイヤーの始点と終点位置
(左:左画像、右:右画像、図中に黒い+マークでサーチされた位置が示されます)

3)ワイヤーの概略中心位置の抽出
次に図29に示す画像データからワイヤーの概略中心位置を抽出します。各ワイヤーの概略位置は、モデルでサーチされた始点と終点を既知の位置として利用します。始点と終点を直線で結び、その中間点付近でワイヤーの左右エッジが検出出来るかをチェックすることでワイヤー位置を検出します。検出された結果が、一意的であり、エッジ間隔が許容範囲内であれば、中間点付近でワイヤーの概略位置が検出されたとします。条件を満足しない場合は、さらに中間点付近の別の位置(最大5点まで)を上記の方法で検出します。中間点付近でワイヤーの概略位置が検出されない時は別の方法に切り替えます。中間点付近でワイヤーの概略位置が検出された時は、始点と中間点の1/2の位置付近を同様の方法でチェックし、ワイヤーの概略位置を検出します。次に 終点と中間点の1/2の位置付近を同様の方法で検出します。このようにして1本のワイヤーの概略位置を順次、中間位置を見つけだすという方法で、合計15点を求めてプログラムを終了させます。ワイヤーが良好に撮像されていれば、上記の方法で十分に15点の概略位置を検出することが出来ます。得られた概略位置をチェックし、良好でないと判断された位置データは除去します。ワイヤーの概略位置を検出した結果を図30に示します。
図30.左右画像データ上で表示された各ワイヤーの概略位置
図30.左右画像データ上で表示された各ワイヤーの概略位置
(左:左画像、右:右画像、図中に白い+マークで概略位置が示されます)

4)ワイヤーの詳細中心位置の抽出
ワイヤーの詳細中心位置は、ワイヤーの概略中心位置をガイド位置としてワイヤーの概略中心位置間のデータを補う形で求めます。まず既に求めたワイヤーの概略位置データから、詳細位置データを求める間隔、ワイヤーの太さを設定します。測定する範囲を各区間に分割します。そして区間毎に設定された検出位置でワイヤーの左右エッジを検出します。検出されたエッジ位置データに対して、多数のエッジ位置が検出されたか、ワイヤーの幅のとして適切かを判定して結果の信頼度を上げます。この処理をワイヤーの始点から終点まで実行します。得られた始点から終点までのデータに対して再度ワイヤーの平均の幅を求めます。測定されたワイヤー幅にデータが大きいものにマークをつけます。マークをつけられた点が除去可能の時は(前後の点にマークがない)除去します。何点か続けてマークがつけられている時は、改めてサーチ区間を設定して、その区間に対して、ノイズ除去、接続性チェック等を行って、再度中心位置を求め直します。このような処理を2回繰り返し、最終的なワイヤーの中心位置データを求めます。求められたワイヤーの詳細中心位置データを図31に示します。図31では、詳細中心位置データ間を白い線で結んでいます。そのため各ワイヤーの中に白い線が描かれています。図31は表示される画像データを今までより大きくしています。
図31.左右画像データ上で表示された各ワイヤーの詳細位置
図31.左右画像データ上で表示された各ワイヤーの詳細位置
(上:左画像、下:右画像、図中に白い線で詳細位置が示されます)

5)ワイヤーの3次元座標値の算出
ワイヤーの詳細中心位置が左右の画像データ上で求められると、各ワイヤーに対して左右の画像データ上での対応をつけて、ワイヤーのループ形状を3次元座標の点列の形で求めることが出来ます。以下に示す5つのプロセスを実行します。1)各ワイヤーの始点と終点を結ぶ直線を求める、2)この直線を30等分する(30はワイヤーの3次元座標値の点列数で任意に設定可能)、3)左右の画像データに対して標定パラメータを用いてエピポーラ線の方向を求める、4)30等分された直線上の点からエピポーラ線の方向に線を引き、各ワイヤー中心位置との交点を求める、5)4で求めた位置を左右画像データ上の対応点としてワイヤーの3次元座標値を求める。
表1にワイヤー番号4の3次元座標値の点列データを示します。3次元座標値の( )で示される数値は、左右の画像データの測定値で交会させた時の残差を表します(単位はmm)。

X(交会残差) Y(交会残差) Z(交会残差)
xg = -0.12610( 0.00002) yg = 1.39183( 0.00313) zg = 0.29348( 0.00004)
xg = -0.09251( 0.00002) yg = 1.32878( 0.00380) zg = 0.29871( 0.00005)
xg = -0.06462( 0.00003) yg = 1.26564( 0.00441) zg = 0.31509( 0.00005)
xg = -0.03729( 0.00003) yg = 1.20267( 0.00499) zg = 0.31869( 0.00006)
xg = -0.00824( 0.00004) yg = 1.13953( 0.00557) zg = 0.33780( 0.00006)
xg = 0.01819( 0.00004) yg = 1.07620( 0.00610) zg = 0.38034( 0.00006)
xg = 0.04538( 0.00004) yg = 1.01293( 0.00662) zg = 0.42019( 0.00007)
xg = 0.07368( 0.00005) yg = 0.94974( 0.00713) zg = 0.45620( 0.00007)
xg = 0.10343( 0.00005) yg = 0.88662( 0.00763) zg = 0.48718( 0.00007)
xg = 0.13304( 0.00005) yg = 0.82353( 0.00811) zg = 0.51860( 0.00007)
xg = 0.16047( 0.00005) yg = 0.76044( 0.00856) zg = 0.55737( 0.00006)
xg = 0.18749( 0.00006) yg = 0.69743( 0.00899) zg = 0.59103( 0.00006)
xg = 0.21156( 0.00006) yg = 0.63450( 0.00939) zg = 0.61937( 0.00006)
xg = 0.23692( 0.00006) yg = 0.57161( 0.00978) zg = 0.64567( 0.00006)
xg = 0.26012( 0.00006) yg = 0.50877( 0.01015) zg = 0.66955( 0.00005)
xg = 0.28332( 0.00007) yg = 0.44598( 0.01050) zg = 0.69036( 0.00005)
xg = 0.30524( 0.00007) yg = 0.38320( 0.01083) zg = 0.71337( 0.00004)
xg = 0.32888( 0.00007) yg = 0.32045( 0.01115) zg = 0.73256( 0.00004)
xg = 0.35098( 0.00007) yg = 0.25774( 0.01146) zg = 0.74969( 0.00003)
xg = 0.37271( 0.00007) yg = 0.19507( 0.01174) zg = 0.75903( 0.00003)
xg = 0.39647( 0.00008) yg = 0.13240( 0.01202) zg = 0.76768( 0.00002)
xg = 0.41974( 0.00008) yg = 0.06974( 0.01228) zg = 0.77087( 0.00001)
xg = 0.44314( 0.00008) yg = 0.00709( 0.01252) zg = 0.76769( 0.00000)
xg = 0.46650( 0.00008) yg = -0.05557( 0.01275) zg = 0.75356( 0.00000)
xg = 0.49739( 0.00008) yg = -0.11832( 0.01296) zg = 0.70884( 0.00001)
xg = 0.52971( 0.00008) yg = -0.18115( 0.01315) zg = 0.64287( 0.00002)
xg = 0.56055( 0.00008) yg = -0.24405( 0.01332) zg = 0.57205( 0.00003)
xg = 0.58903( 0.00008) yg = -0.30704( 0.01347) zg = 0.49360( 0.00004)
xg = 0.61589( 0.00009) yg = -0.37012( 0.01361) zg = 0.40981( 0.00004)
xg = 0.67039( 0.00009) yg = -0.49668( 0.01382) zg = 0.21199( 0.00006)
表1.ワイヤー番号4の3次元座標値(結果の例)

図32にチップ・リードフレーム・ワイヤーの概略画像データを参考として示します。

図32.チップ・リードフレーム・ワイヤーの概略画像データ
図32.チップ・リードフレーム・ワイヤーの概略画像データ

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