ウェーハアライメント

ウェーハアライメントの概要

半導体ウェーハ(以降ウェーハ)を装置のX軸(またはY軸)に平行になるように角度を補正し、ウェーハ上のあるチップの特定の位置を装置座標系で位置決めすることを目的とします。
上に記述した目的は、ウェーハがXYθテーブル上でコントロールされる場合を想定しています。装置によっては、ウェーハの角度補正を行わなくてもコントロール可能な場合もあります。この場合でも、テーブル上に載せられたウェーハ中心の変位量と傾き角度を計測する必要がありますので、内容としては同等と考えます。
図1に典型的な場合のウェーハアライメントを実行するためのパターンサーチ位置と順番を示します。まず低倍率でラフアライメントを実行します。ラフアライメントは、ウェーハの傾き角度を補正して、ファインアライメントのサーチが出来る条件を整えます。ファインアライメントは高倍率で実施し、装置が必要とする精度を達成するようにウェーハの傾き角度の補正とウェーハの位置決めを行います。さらにアライメントの精度確認のためファインアライメント位置と異なる位置でチェックを行うことがあります。工夫されたウェーハの傾き角度の補正法をとれば精度確認は省略することも出来ます。

ウェーハアライメントのプロセス

通常のウェーハアライメントは、以下の3つのプロセスからなります。

1).プリアライメント
メカ機構によるアライメント
目標精度 ±3度程度
2).ラフアライメント
低倍率の光学系を使用して3〜5点をパターンマッチングにより計測し、ウェーハの左右で角度誤差が±100μm以内となる精度を確保します。誤差をどの程度とするかは、高倍率光学系の視野の大きさに依存します。10倍の光学系では、視野が640μm×480μmありますので100μm程度の誤差で問題ありません。
ラフアライメントのサーチ位置は、典型的な場合は以下のようになります。
 1点目 : ウェーハの中央付近
 2点目 : 1点目から数チップ離れた位置
 3点目 : ウェーハ外周付近
2点目のサーチ位置は、1点目の見つけられたパターン位置からあるルールに従って算出します。このルールは、チップサイズ、チップの縦横比およびプリアライメントの精度を考慮したものでなければなりません。1点目と2点目がサーチされると、ウェーハの傾き角度が算出できるので3点目のサーチ位置は、簡単なルールで求めることができます。3点目がウェーハ外周付近であれば4点目は必要ありませんが、チップが大変小さい場合には、ウェーハ外周付近となるまで4点目、5点目のサーチ位置を設定する必要があります。

図1.ウェーハ上のアライメントサーチポイント
図1.ウェーハ上のアライメントサーチポイント
(○は低倍率、□は高倍率でのサーチ位置で、数字はサーチの順番を示す)

3).ファインアライメント
高倍率の光学系を使用して目標精度となるようにウェーハを位置決めします。光学系の倍率は、目標とする精度から決める必要があります(画像データ1画素のサイズ等)。ファインアライメントは、ウェーハ外周付近の左右のターゲット位置(パターンサーチ位置)を計測するプロセス、計測結果を補正するプロセス(追い込みプロセス)、精度確認するプロセスの3つのプロセスが必要です。装置自身でX軸、Y軸、θ軸をクローズ制御している場合には、追い込みプロセスは簡単になりますが、一般的にはクローズ制御されているものは限られています。
ウェーハ外周付近の左右パターンサーチは、通常X軸のみを移動させて計測します。これにより、左右パターンのサーチされた位置は、装置のXY両軸の誤差でなく1軸の誤差のみの影響にとどめることができます。ウェーハ外周付近の左右のパターンサーチされた位置から、最終的に補正すべき角度を求めます。この角度を追い込みプロセスにより補正します。
追い込みプロセスは、装置のもつX軸、Y軸およびθ軸の制御特性を考慮した方法でなければなりません。左右パターンのサーチされた座標値を補正すべき角度回転して得られるアライメント後の座標値(追い込み位置の座標値)を求め、その位置でターゲットパターンを見つけるようにθ軸を制御することで追い込みをおこないます。追い込みプロセスでのθ軸制御は相対制御で行います。追い込みと精度確認は、1つの方法で同時に実施することも出来ます。
追い込みプロセスの後、精度確認を1点または2点実施します。この時、XY両軸移動させないような確認位置を設定することが大切です。

ウェーハアライメントプロセスで考えておくべき点

ウェーハアライメントのプロセスを3に記述しましたが、アライメントのアルゴリズムで考慮すべき点を以下に記述します。

1).光学系の倍率
高倍率光学系の倍率は、目標とする精度を考慮して決めます。10倍の光学系では、視野が640μm×480μmで1画素が1μmです。
2).ラフアライメント1点目のサーチ位置を決めるルール
光学系の1視野がアライメントするチップより大きいか小さいかにより、ラフアライメント1点目をサーチする時に何視野チェックする必要があるか決まります。チップが1視野よりも小さい場合には、サーチウィンドウを制限する必要があります。正確には(チップXサイズ+モデルXサイズ)×(チップYサイズ+モデルYサイズ)がサーチウィンドウサイズです。
パターンマッチングを利用したアライメントでは、ラフアライメント1点目として1チップ分サーチしてもウェーハ表面のバラツキ等でサーチ出来ないことがあります。このような場合に対応するため何チップかをサーチするルールを設けておく必要があります。図2は1例で見つけられない場合9チップを順次サーチするルールです。


図2.ラフアライメント1点目のサーチ位置決定ルール

3).ラフアライメント2点目のサーチ位置を決めるルール
ラフアライメント2点目は、1点目から数チップ離れた位置を設定しますが、この距離はチップの大きさ、チップの縦横比、およびプリアライメントの精度を考慮しなければなりません。

図3.ラフアライメント2点目のサーチ位置決定ルール
図3.ラフアライメント2点目のサーチ位置決定ルール

アライメント2点目もウェーハ表面のバラツキ等でサーチ出来ないことがあります。このような場合に次にどの位置をサーチ位置とするかルールが必要です。一般的には、1チップ分1点目側に移動した位置とします。当然のことながら2点目のサーチ位置では、チップの大きさが1視野より大きくても1回しかサーチは行いません。
4).ラフアライメント3点目以降の点のサーチ位置を決めるルール
ラフアライメントプロセスの1点目と2点目が見つけられるとウェーハの傾き角度が求められます。3点目以降の点の位置は、ラフアライメントの角度精度を1画素程度と評価して決めます。設定された位置がウェーハ外周位置としてよいか、さらに見つけられない時にどの位置に移動するかをルールとします。ウェーハ外周位置としてよい場合は、サーチOKのときラフアライメント終了とします。ウェーハ外周位置と出来ない場合は、さらに4点目の位置を設定します。
5).プリアライメント機構のない場合
プリアライメント機構のない場合は、ラフアライメントプロセスの1点目と2点目のサーチ位置を設定するアルゴリズムにおいて工夫が必要となります。まずラフアライメントのモデルパターンが傾きに強いことが必要です。1点目の位置設定は大きな違いはありませんが、2点目のサーチ位置を設定する時にさらに大きい角度範囲から位置を決めるというルールをつくる必要があります。一般的には、1点目と2点目の距離を短くしなければなりません。またチップの大きさによっては、X方向だけでなくY方向にもサーチ位置をずらすように設定する必要があります。このような点を考慮するとプリアライメント機構のない場合には、アライメントの処理時間が長くなります。
6).ファインアライメントの追い込み
ファインアライメントの計測プロセスで左右のターゲットパターンの位置を計測します。その座標値を左側(Xl、Yl)、右側(Xr、Yr)とすると、アライメントされた後の座標値は下記のように表されます。Y座標値は左側と右側では等しくなります。(Xc、Yc)は、テーブルの回転中心位置を表します。

Xl’ = ( Xl - Xc)*cosψ+ ( Yl - Yc)*sinψ+ Xc
Yl’ = - ( Xl - Xc)*sinψ+ ( Yl - Yc)*cosψ+ Yc
Xr’ = ( Xr - Xc)*cosψ+ ( Yr - Yc)*sinψ+ Xc
Yr’ = - ( Xr - Xc)*sinψ+ ( Yr - Yc)*cosψ+ Yc
Yl’ = Yr’
Xr’- Xl’ = M*チップXサイズ (Mは左右のターゲット間のチップ数−1)

上記の式における角度ψを求め、θ軸をコントロールしてその角度を補正することで、ウェーハを装置と平行にすることができます。
ファインアライメントを実行するにあたって考慮すべき点は、装置のX軸、Y軸、θ軸には当然制御の精度があるという点です。そのためまず左右のターゲットパターンの計測においてY軸を移動させずに、X軸のみを移動させて左右のターゲットパターンの位置を計測します。これによりX軸の送り精度が少し悪くても(上記の式においてMが完全に整数とはならない)、ウェーハの傾き角度は、Y軸移動の誤差を含まず、Y方向の差という形で計測されるので角度の誤差は問題となることはあります。
次に角度ψの補正を確認することですが、これは、補正された右側位置(Xr’、Yr’)でターゲットパターンを検出することで確認できます。θ軸のコントロールがクローズ制御されていれば、角度ψ補正すれば、角度ψだけ回転しますが、通常では、角度ψ回転させても、位置は合致しません。そのため追い込みのプロセスでは、θ軸のコントロールを相対制御する必要があります。そして上記内容からわかるように、1画素の大きさの正確な値とテーブルの回転中心位置座標をキャリブレーションしておく必要があります。
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